2006年12月31日

今年最後の読書

おおつごもりですね。
今年最後の読書は、山川出版社の日本史リブレットシリーズの最新刊、『琉球の王権とグスク』です。
安里進著、2006年12月20日発行、A5判106頁。本体価格800円。

一言で言えば、とっても刺激的な本です。
安里氏の最近の論考のエッセンスを一冊にまとめて、新しい琉球王権の形成・成立論を提示したものです。この示唆に富む本が、リブレットという形で提供され、誰でも手軽に読むことができるのは、幸せです。


本書の魅力は、15世紀の文献史料の検討と著者が長年携わってきた浦添グスク・浦添ようどれの発掘調査の成果、それに首里城などの大型グスクや王陵の構造の検討、16、17世紀の文献の記述などとを合わせて、説得力のある琉球王権の形成過程の論証を行っていることにあります。
その論証に欠かせない図版もふんだんに使われていて、理解を深めるのに役立っています。統一以前の琉球史における浦添の位置づけについて、認識を新たにさせられると思いますし、さらに、中国および東アジアと琉球とのさまざまなレベルの関わりについても新しい見方が示されており、著者によるさらなる琉球史研究の発展も大いに期待されます。

2006年も、沖縄の本を、相当読むことができました。
従来にない新たな視座からの書物が多かったと思いますが、この安里氏の新刊はその締めくくりにふさわしい本であったと思います。

では、ことしはこれにて。
たくさんの方々にお読みいただいて、ありがとうございました。
2007年も、よろしくお願いいたします。
みなさん、良いお年をお迎えください。


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Posted by 干瀬のまれびと at 14:52│Comments(4)
この記事へのコメント
はじめまして「干瀬のまれびとの座」さん。
年末に紹介された『琉球の王権とグスク』の著者です。過分な書評をいただきありがとうございます。
浦添市の「結の街」のホームページhttp://yuinomachi.jp/に下手なコラムを書いております。成り行きで、このホーム㌻に拙著を紹介することになり、「干瀬のまれびとの座」の書評を掲載させていただきたく存じます。よろしいでしょうか?

ブログへの応答をどのようにしたら良いのかわかりませんので、ご回答をどのようにして受け取れるかもわかりませんが、よろしく御願いいたします。

じつは、年末にはじめて「干瀬のまれびとの座」があることを知りました。拝読してファンになりました。愛読者の一人にさせていただきます。

安里進
Posted by 安里進 at 2007年01月14日 12:33
安里進様

ご連絡、ありがとうございました。
私の勝手かつ拙い「書評」?に対し、想定外の展開で、おどろいております。
もちろん、拙文をお使いいただくことは、かまいませんが、逆に、私の拙文でいいのかと、不安になります。

実は、私は安里さんを存じ上げております。
でも、このブログでは本名を名乗っておりませんので、上記メールアドレスにメールをいただけませんか?
そこで、個人的にやりとりが出来るようになると思います。そこで、あらためて、ご挨拶申し上げます。
どうぞよろしくお願いいたします。

「結の街」は国立劇場おきなわの前にある建物ですよね。
昨年でしたか、劇場にいくついでに寄り、中の展示に感心させられました。
また、さきほど安里さんのエッセイを拝見いたしました。
とても面白いです。私も、これから定期的に拝読させていただきます。

これからも、よろしくお願いいたします。
Posted by 干瀬のまれびと at 2007年01月14日 12:58
安里進様

すみません。
「上記メールアドレス」がありませんね。失礼いたしました。
tukinukaisha421@yahoo.co.jp にお願いいたします。
Posted by 干瀬のまれびと at 2007年01月14日 13:08
今頃気づきました。
メールアドレスです。
Posted by 安里 進 at 2008年11月10日 14:21
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