2010年03月21日

益田勝実先生に学んだこと

昨日、古代文学研究者益田勝実氏の訃報が流れました。
先月6日に亡くなっていた、とのこと。
  いにしえの闇を語りし碩学の逝く道遥か灯(あかし)ともさむ 

もう30年近く前になりますが、大学院に益田先生が非常勤講師として来られました。
たしか5時間目だったと思いますが、10人くらいの受講生を前に、宇治拾遺物語を講読されました。
一つの段に、何時間もかける、その読みの深さに圧倒されました。
なぜそんなに時間がかかるかというと、お話がテキストを超えて、どんどん膨らみ拡がっていくからです。
とてつもない大きな学者だと、そのときの院生は皆思ったはずです。
と同時に、何千円何万円もする本を出す学者への批判をされるなど、学問を世に問う姿勢について、とても厳しい見方をされる方で、そのこともとても印象深かったですね。

益田先生が、講義で沖縄の話をされたことはなかったと思います。
もちろん、柳田國男・折口信夫の学問に深い理解をされておられましたから、沖縄についてもたくさん知識をお持ちだったはずで、「おもろさうし」を踏まえた論考などがありますが、お話の中には出てきた記憶はありません。
というか、沖縄の話をされていても、たぶん当時は理解できなかっただろうと思います。
でも、私は、日本の祭を見学するときはサングラスをかけて観なさい、という先生の言葉が耳奥にこびりついています。
神や霊の活動するのは夜・闇の中である、という御説、とても説得力があったのです。
実際に祭祀を見学するときにサングラスをかけたことはありませんが(笑)、十数年前に石垣島川平のマユンガナシを見学したときに、この益田先生のことばを実感したものでした。逆に、愛知の花祭りを見学した際に、ビデオ撮影のためにライトを煌煌と照らしていたのには大変違和感をもち、あらためて先生の見方の重みをかみしめたものです。
沖縄を知った後に、先生の講義を受けていたら、いろいろ質問しただろうなと思いますが、それも幻。
今の国文学や民俗学を、益田先生はどう見ておられたのか・・・、ほんの少しですが先生の謦咳に接した者として、襟を正して勉強してゆかねばと思います。


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Posted by 干瀬のまれびと at 10:16│Comments(0)日記
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